研究概要 |
われわれは前年度までの研究で、末梢神経機能測定装置Neurometer CPTを利用して、硬膜外ブロックによる神経分離遮断を神経選択的定量的に観察することに成功した。平成11年度では、使用する局所麻酔薬の濃度による硬膜外プロックの神経遮断の変化を、神経線維の太さに分けて調べることにした。 局所麻酔薬には、硬膜外ブロックに一般的に臨床使用されているリドカインを用い、2種類の濃度の異なる溶液による神経分離遮断を検討した。対象はASA I度の硬膜外麻酔が適応となる婦人科手術予定患者20名とし、以下のプロトコールで研究を施行した。 (1)手術予定前日までに、Neurometer CPTによる測定検査に慣れてもらった。 (2)手術当日、前投薬なしで手術室内の静かな部屋に入室後、通常のモニター装着した。患者を左側側臥位とし、L1/2より硬膜外穿刺を行い、頭側に向けて硬膜外カテーテルを硬膜外腔に5cm挿入して固定した。 (3)患者を安静仰臥位に戻し、薬液注入前のbaseline値の測定を行った。 (4)患者を無作為に2群に分け、1%lidocaine 20mLまたは2%lidocaine 10mLを投与した、 (5)薬液投与後は5分毎に60分まで測定を行った。 (6)測定項目は、Neurometer CPTによる2,000、250、5Hzの3種類の周波数電気刺激に対する最小閾値と触、痛、冷覚消失域その他であった。 結果は、触、痛、冷覚消失域は2つの溶液で差がなかったが、Neurometer CPTでみると、2%lidocaine溶液が1%のものに比べてどの周波数でもより強い神経遮断を生ずることがわかった。すなわち、投与量が同じでも使用する溶液の濃度が異なれば、硬膜外ブロックによる神経遮断は神経線維の太さに関わらず異なることが示唆された。
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