研究概要 |
低マグネシウム(Mg)血症ラットモデルは,調合を工夫した飼料を与えた飼育による作成の予定だったが,中心静脈栄養カテーテルを挿入し,フロセミド静注による作成に変更した.この方法での低Mg血症ラットの作成についての発表はまだなく,この作成方法の方がより臨床に近いモデルである.高カロリー用輸液製剤はアミノトリパ^<【○!R】>2号で,輸液速度を2ml・h^<-1>と設定し,フロセミドを投入するので水分補給は自由とした.アミノトリパ^<【○!R】>2号45ml,KCl3mEqおよびフロセミド3mgを1日量とした.1週間後の各ラットの平均は,血中Mg^<2+>濃度が0.50mMから0.30mMへと低下し,血中k^+濃度は3.49mMであり,低Mgラットモデルの作成に成功した.この中心静脈栄養による低マグネシウム血症ラットモデルの作成方法を確立させたことが,新たな知見であり,この研究の大きな成果である.このラットの使用による低Mg血症と疼痛閾値との関連を調べる研究は,疼痛刺激装置が手に入るまでに時間がかかり,継続研究課題として現在進行中である. 臨床では,patient-control-analgesia(PCA)の技法を用いて,低Mg血症群(コントロール群)および硫酸Mg投与群とにおいて比較検討することにより,低Mg血症の術後痛に及ぼす影響について解明した.婦人科の広範子宮全摘術予定手術患者では大量出血のため血中Mg濃度は,0.46mMから0.32mMへと低下した(コントロール群).一方,手術中,補正用硫酸Mg液を5-10mEq投与することによって血中Mg^<2+>濃度を正常範囲内に保つことができた(硫酸Mg投与群).手術後PCAによるブプレノルフィンの投与量には両群に有意差が認められなかった.この研究結果から手術中の血中Mg^<2+>濃度の低下は術後痛にはあまり影響を与えないことが示唆された.
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