研究概要 |
これまで膀胱腫瘍の進展に、様々な成長因子の関与が報告されているものの、骨形成蛋白質/受容体(BMP/BMPR)系の関与は全く不明である。本研究では、膀胱腫瘍組織、膀胱腫瘍細胞株におけるBMP/BMPRの発現、および膀胱腫瘍細胞株におけるBMPの増殖効果を検討した。膀胱腫瘍細胞株(T24、UMK-1)および手術材料(正常組織および膀胱腫瘍組織)からmRNAを抽出し、RT-PCR法を用いてBMP(BMP-2)、BMPR(BMPR-IA,-IB and-II)の発現を検討した。また膀胱腫瘍細胞株については、BMP/BMPRのシグナルを伝達するSmad(Smad1,4 and 5)の発現も検討した。その結果、T24はBMPR-IAおよび-IBともにmRNAの発現がみられたが、UMK-1はBMPR-IAmRNAの発現しかみられなかった。Smad1,4,and 5は、これら膀胱腫瘍株でのみ検討を行ったがすべて発現しており差を認めなかった。膀胱腫瘍組織においてはBMPR-IA mRNAの発現のみで、BMPR-IB mRNAは検出できなかった。BMPR-IIはいずれの膀胱腫瘍組織,膀胱腫瘍細胞株においてそのmRNAの発現がみられた。次に、これら膀胱腫瘍細胞株(T24、UMK-1)の培養液中に、各種濃度のりコンビナントBMP-2を添加し、膀胱腫瘍細胞の増殖におけるBMPの作用をMTSアッセイを用いて検討した。T24においてはBMP-2 100ng/ml以上の濃度において増殖促進がみられたが、UMK-1では認めなかった。これら増殖における効果の相違は、BMPR-IBの発現差による可能性も考えられ、現在constitutive activeおよびdominant negative BMPR-IA,-IB発現ベクターをこれら膀胱腫瘍細胞株に遺伝子導入し、さらに検討を進めている。
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