研究概要 |
1. 子宮頚癌発生過程におけるFHIT遺伝子の発現異常を解明するために、子宮頚癌32例(扁平上皮癌25例、腺癌・腺扁平上皮癌7例)、CIN18例(CIN I;14例、CIN II/III;14例)においてRT-PCRおよびcDNA塩基配列決定によりその発現を検討した。欠失を伴う異常なFHIT mRN人遺伝子の発現が子宮頚部扁平上皮癌で44%に検出された。腺癌などでは発現異常はなかった。また、CIN Iでは検出されないが、CIN II/IIIでも36%に検出され、earlyeventであると考えられた。異常発現のパターンは、exon 5-7の欠失が共通して認められた。CINの癌への進展過程に関与している可能性がある。 2. 高齢者の子宮頚癌46例(60-96才、平均71才)のHPV同定とp53 mutationについて検索した。子宮頚癌ではp53 mutationの頻度は0-4%とされているが、子宮頚癌より平均で約15才高齢な外陰癌では20-50%と報告されている。HPV型は一般に比べHPV陽性率は96%と差がなかったが、HPV16,HPV18の頻度が低く37%でそれ以外の型が59%を占めていた。これは、HPV16,HPV18以外の型では、感染から発がんまでに時間を要することが考えられる。また、p53 mutationの頻度は11%(5/46)と高い傾向にあり、HPV16,HPV18以外の型に限ると15%(4/27)とさらに高率であった。また5例のp53 mutationはendogeniousmutagenesisによることを示すtransition typeで、高齢との関連が考えられる。
|