研究概要 |
マウスgp49B1は分子内にITIMを有する抑制性レセプターとして、NK cell,mast cellに存在することが報告されている。本分子は妊娠時の子宮、特に妊娠中期の子宮間膜線に強く発現していることを平成10年度に報告した。そこで、今年度は、gp49B1が間膜線のどのpopulationに発現しているかを調べるために、間膜線より単核球を分離し、抗gp49抗体と各種細胞表面マーカーの抗体で二重染色しFACS解析した。その結果、gp49はマクロファージのマーカーであるF4/80陽性の細胞表面に染まった。本抗体はgp49B1およびgp49A(gp49B1と細胞外の構造はほとんど同じであるが細胞内にITIMを欠くisoform)両方に反応してしまうため、RT-PCRによりisoformの同定を行った。その結果、子宮マクロファージにはgp49B1とgp49A(まとめてgp49と記す)がほぼ等量発現していることがわかった。Gp49は骨髄のGr-1,MAC-1陽性のmyeloid系の細胞に発現しており、間膜腺から分泌される因子、恐らくM-CSFの作用によりマクロファージへと分化、増殖したと考えられた。 一般に、妊娠時の子宮では、IL-4,IL-10などのTh2タイプのサイトカインが優位で、炎症性サイトカインの産生は抑制されている。マクロファージの活性化はTNF-αに代表される炎症性サイトカインの産生を増加させ、子宮内サイトカインバランスを崩し流産の原因となりうる。子宮マクロファージの活性化レセプターFcγRIを固相化IgGで刺激すると大量のTNF-αを産生した。次に固相化IgG+抗gp49でFcγRIとgp49を共架橋するとTNF-αの産生が抑制された。本結果は、gp49がマクロファージの活性化を抑制するため、マクロファージに本来備わっている負の調節因子の1つであることを示唆する。自己抗体が原因の不育症では、抗原抗体複合体によりマクロファージのFcレセプターが架橋され、炎症性サイトカインの産生が亢進していると推測される。抑制性レセプターはその産生を抑制し妊娠維持に関与している可能性がある。
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