研究概要 |
昨年度の免疫組織学的実験の結果、子宮頚部扁平上皮癌では、性ステロイド受容体と細胞周期調節因子の発現異常の存在が示され、正常な性ステロイドホルモンによる増殖制御から逸脱している可能性が示唆された。また正常上皮と比べCINおよび浸潤癌では、サイクリンおよびcdk陽性細胞数が明らかに増加しており、腫瘍細胞が細胞周期調節因子を過剰発現して活発な増殖能を獲得している可能性も示唆された。本年度は、関与する細胞周期調節因子の種類が異なった場合、細胞増殖能や患者の予後に影響を与えている可能性があるという仮説を立て、これを検討するために研究実施計画の如く実験を行った。[対象と方法]子宮頚部扁平上皮癌60例におけるサイクリンE,サイクリンA,p53,Ki-67の発現を免疫組織学的に観察し、その結果を増殖能および予後との関連から比較検討した。染色結果は細胞500個当たりの陽性細胞率で評価した。[結果]サイクリンA陽性群とp53陽性群では、各陰性群と比較してKi-67陽性細胞率が高かった反面、サイクリンE陽性群は陰性群よりKi-67陽性細胞率が低かった。各群の予後が判明している症例において累積生存率の差をKaplan-Meier法にて検討したところ、サイクリンA陽性群、p53陽性群の予後が、各陰性群と比較して有意に不良であった。[考察]以上の結果から、子宮頚部扁平上皮癌では、CyclinA,およびp53の陽性例において、癌細胞の増殖能が高まっており、各陰性例と比較して患者の予後が不良である可能性が示唆された。CyclinEの陽性例では、癌細胞の増殖能が低い可能性が示唆されたが、予後に影響を与える因子とはなり得ていなかった。以上より、異常発現する細胞周期調節因子が異なると癌の生物学的悪性度も異なる可能性が示唆された。
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