研究概要 |
近年,SCC抗原をコードする遺伝子が2個(SCCA1,SCCA2)あり,アミノ酸配列上相同性の非常に高いSCC抗原-1,SCC抗原-2が存在することが確認され注目されているが,その生物活性及び分子多様性については未だ十分に解明されていない. 今回,扁平上皮癌および正常扁平上皮でのSCC抗原の分子多様性を,2次元電気泳動法を用い解析した.2次元電気泳動法は1次元目に未変性条件によるキャピラリー等電点電気泳動を行い,2次元目に変性条件であるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を施行した.癌組織中SCC抗原は,分子量45.000の領域に等電点6.4から5.9の亜分画以外(SCCA1由来)に,等電点5.7から5.5の亜分画(SCCA2由来)が存在することを見いだした.一方,正常人ケラチノサイトにおけるSCC抗原発現を検討した結果,培養液中カルシウム濃度を増加させると細胞内SCC抗原(等電点6.4および等電点5.7の亜分画が主体)は増加し,逆に培養液中SCC抗原(等電点6.4の亜分画が大部分)は減少することが示唆された.癌あるいは正常扁平上皮においてSCC抗原-1蛋白,SCC抗原-2蛋白の発現,分泌には差があると考えられた. さらに,これまでSCC抗原はキモトリプシン,カテプシンLと複合体を形成しその蛋白分解酵素活性を阻害することを示してきたが,免疫染色法にて組織中SCC抗原を検出すると新たに電気泳動上高分子量領域にSCC抗原の亜分画を認め,生体内においてSCC抗原は標的蛋白解酵素と反応している可能性が考えられた.
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