研究概要 |
1)L1コンセンサスプライマーの内側に新たなコンセンサスプライマーを設定し、nested PCRを行った。検出感度をsingle L1 PCRと比較したところ、約10倍の感度が得られた。SSCP法により16、18、31、35、51、52、56の各型についてタイピング可能であることが確認された。 2)nested L1 PCR-SSCP法で子宮頚部異形成95例の細胞診検体につきHPVの検出・タイピングを行い、L1 PCR-RFLP法による結果と比較した。結果の異なったものについて塩基配列を解析した。HPV16型の判定において、L1 PCR-RFLP法では、4例の偽陽性と2例の偽陰性が見られた。それらは全て重複感染例であった。重複感染はL1 PCR-RFLP法では約10%に、nested L1 PCR-SSCP法では約40%に見られた。 3)子宮頚癌組織検体37例についてnested L1 PCR-SSCP法にてHPVの検出・タイピングを行ったが、重複感染は全く見られなかった。HPVの重複感染は、子宮頚部異形成において病的意義を持つ可能性が示唆されたが、子宮頚部発癌に直接の関係はないと思われた。 4)レーザー円錐切除術前にHPV陽性で、術後6ヶ月以上経過観察が可能であった45例中5例で子宮頚部細胞診はクラスIIIaであり,うち2例でHPV陽性(35型,51型)が持続した。円切後に追加手術を行った8例のうち、摘出子宮に浸潤癌がみられた1例では18型が、CISがみられた1例では16型が円切前後で認められた。摘出標本で残存腫瘍がみられなかった4例と極少量の残存腫瘍が肉芽組織で厚く被われていた2例では円切後にはHPVは検出されなかった。円切術後の経過観察において、nested L1 PCR-SSCP法でHPV陽性の場合は厳重な管理が必要であることが示唆された。
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