研究概要 |
1.前年度樹立した正常結膜上皮細胞,正常結膜線維芽細胞,翼状片由来上皮細胞,翼状片線維芽細胞,結膜上皮細胞株,角膜上皮細胞株各々の培養細胞より抽出したRNAをRT-PCR法で検討した結果,すべての細胞から可溶型,および膜結合型両者のstem cell factor (SCF)のmRNAを検出した. 線維芽細胞ではそのほとんどが可溶型のmRNAであった.一方角結膜および翼状片上皮細胞では膜結合型の比率が線維芽細胞に比較して高かった.各々の培養上清および細胞溶解液中のSCF濃度をELISA法にて検討した結果,培養上清中の単位細胞あたりのSCF濃度は線維芽細胞に多かったが,細胞溶解液では上皮系細胞で顕著に認められた.また線維芽細胞培養液にIL1-βを加えることで可溶型SCFの産生が増加した.この結果から,結膜線維芽細胞は主に可溶型SCFを産生し,眼表面炎症疾患等で結膜下組織および涙液中にSCFを拡散し肥満細胞の活性化に関与し,上皮細胞では主に膜結合型SCFを産生することで、上皮内肥満細胞遊走に関与していると推測された. 2.培養角結膜上皮細胞株,結膜線維芽細胞に閾値下(細胞死を惹き起こさない程度の)紫外線を照射し,照射24時間後の培養上清中のIL-1β,IL-6,TNF-α,SCF各濃度をELISA法で検討した.IL-1βは紫外線照射により濃度の上昇を見たが,いずれも有意差を認めなかった.今後細胞内サイトカイン量を検討する必要があると考えられる.
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