昨年度は、培養された表皮細胞、線維芽細胞からPGE2産生に及ぼすサイトカインの影響について検討した。その結果IL-1刺激由来の線維芽細胞PGE2産生には誘導されたCOXすなわち誘導型COX(COX2)が関与していることが推定された。 本年度は、本実験系によりCOX2の遺伝子レベルでの発現をRT-PCR法を用いて検討した上で、COX2媒介性PGE2の結合組織代謝に及ぼす影響を検討した。その結果培養線維芽細胞は、IL-1刺激によりCOX2遺伝子を誘導することが、RT-PCRによって確認された。これらのことから、サイトカイン刺激により皮膚由来の線維芽細胞はCOX2を誘導することでPGE2産生を亢進し炎症増強ならびに創傷治癒過程における血管新生などに関与していることが明らかになった。 ところでケロイドや肥厚性癜痕形成過程において肉芽の過増生が問題となるが、その際創部において炎症像を呈し、その症状が持続することも知られている。そこでPGE2産生と肉芽の過増生に影響する結合組織特に1型コラーゲン産生との関係について、PGE2抗体を用いた免疫中和法を利用し検討した。培養線維芽細胞は1型コラーゲンを自然産生するが、TGFと共に培養することで結合組織産生はより刺激された。抗PGE2抗体を用いて、培地中に産生されるPGE2を免疫中和すると、線維芽細胞が自然産生する1型コラーゲンは減少した。さらにPGE2抗体が存在しないときの結合組織すなわち1型コラーゲン産生はTGF濃度依存的に亢進したが、抗体を共存させることでコラーゲン産生が有意に抑制された。これらのことから、PGE2は、創部のコラ一ゲン産生に影響し、炎症の持続すなわち創治癒の遅延が肉芽過増生を促し、このことがケロイド肥厚性癜痕形成に影響していることが示唆された。
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