研究概要 |
本年度はマウス下顎第1臼歯歯胚歯乳頭において生後3日以降、象牙芽細胞層に出現するF4/80陽性細胞を同定することを目的とし免疫組織化学的および酵素組織化学的に検討した。その結果、F4/80陽性細胞は,胎生13日ですでに歯乳頭予定域でわずかにみられ、生後3日以降は主に基質形成を行っている象牙芽細胞層およびその近傍にみられた。そのF4/80陽性細胞は、萌出直前の生後15日には免疫染色性が低下するものの,萌出後の生後20日には,再び染色性が増大した。また、象牙芽細胞層とその近傍でみられたF4/80陽性細胞は、Fc γ receptor抗体にも反応を示し、他のマクロファージ(Mφ) ・樹状細胞抗体や酵素組織化学(酸性ホスファターゼ・非特異的エステラーゼ活性)には反応を示さなかった。このことから象牙芽細胞層とその近傍にみられたF4/80陽性細胞は、リンパ系器官の成熟した樹状細胞を主に認識する抗樹状細胞抗体に陰性で、Mφに特異的に検出される酸性ホスファターゼ・非特異的エステラーゼ活性が陰性であり、未熟な抗原提示細胞を認識するFc γ receptor抗体に陽性であったことから、未熟な樹状細胞であると考えられる。歯胚の初期形態形成過程ですでに歯乳頭にその樹状細胞が出現し、象牙芽細胞層に侵入することが明らかになった。
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