研究概要 |
米国ジェネンテイック社は、我々と共同で、CMK細胞にc-mpl遺伝子[トロンボポエチン(TPO)受容体遺伝子]が発現していることを利用し、世界に先駆けてTPOの発現とその遺伝子の単離に成功した(Nature369:533-538,1994)。また、KaushanskyらによりマウスTPOが、CMKの分化誘導を行うことが示され、さらにTPOがendomitosisをも惹起する強力な分化誘導因子であることが判明した(Nature369:568-571,1994)。そこで、CMK細胞を用いて、TPO分化誘導時におけるc-Mpl蛋白発現状況の経時的変化およびc-mpl遺伝子mRNA,c-mpl遺伝子プロモーター活性の変化を各々解析し、巨核球分化成熟過程におけるTPO受容体発現機構の解析および分化誘導時における形態的変化について検討を加えることを目的とし研究を行ないました。 1)巨核球細胞表面上のc-Mpl発現状況の経時的変化に関しては、FACSによる解析が非常に困難で、市販されている唯一の抗体である米国ジェンザイムの社c-Mpl抗体では結果が得られなかったため、米国ZYMOGENETICS社に依頼した結果、FACS解析可能なc-Mpl抗体を特別に分与してもらえることになった。そこで、この抗体を用いてCMK細胞を米国ジェネンテック社より特別に分与されたTPOにて分化誘導後、細胞表面上のトロボポエチン(TPO)受容体(c-Mpl)発現の経時的変化をFACSにて解析したところ、TPO処理後1時間で細胞表面上のc-Mpl[トロボポエチン(TPO)受容体]のダウンレギュレーションが認められた。その後TPO処理後3時間でc-Mpl[トロンボポエチン(TPO)受容体]のダウンレギュレーションが最大となり、その後はアップレギュレーションすることを確認いたしております。 2)さらに、上記のFACS解析と同じ条件下でのTPO処理によるc-Mpl発現状況の経時的変化を、米国ジェンザイム社のc-Mpl抗体にて免疫沈降法およびウエスタンブロッテイング法にて解析を試みたが結果が得られませんでした。現在、免疫沈降法およびウエスタンブロテイング法解析可能なc-Mpl抗体を特別に分与して頂けることになっており今後TPO分化誘導時におけるTPO受容体数変化を定量的に解析検討したいと考えております。 3)米国ジェネンテック社より特別に分与されたトロンボポエチン(TPO)にてCMK細胞の分化誘導を行い、TPO分化誘導時におけるCMK細胞のc-mpl遺伝子プロモーター活性の経時的変化に関しましては、c-Mpl[トロボポエチン(TPO)受容体]のアップレギュレーションに呼応するようにTPO処理後24時間でc-mpl遺伝子プロモーター活性はピークを迎え、以降減衰し、TPO処理前の活性に戻ることを確認いたしております。
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