研究概要 |
本研究は唾液腺に存在する糖輸送体の種類を同定し、各種刺激に伴う糖輸送体の動態とその機能発現機序及び病態を解明することを目的に行い、下記の成果を得た。 1)糖輸送体の耳下腺における局在と加齢変化 4,8,52,104週齢のラット耳下腺より分画した管腔膜(APM)、基底膜(BLM)、細胞内顆粒膜(ICM)をSDS-PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写後、抗GLUT1〜5抗体、抗SGLT1抗体を用いてウエスタンブロッティングにて糖輸送体の局在を検索したところ、いずれの週齢においてもGLUT1はAPM、ICM及びBLMに、GLUT5はBLMに、SGLUT1はAPMとICMに発現していることが認められた。しかし、AMPとBLMにおいて、糖輸送体量に加齢変化が認められ、ICMでは加齢変化は認められなかった。 2)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動と加齢変化 耳下腺切片をアセチルコリン(ACh)又はエピネフリン(Epi)と加湿振盪し、上述の方法で、糖輸送体の動態を検索すると、これらの神経伝達物質で促進輸送型糖輸送体はICMよりAPMやBLMへ移動しAPMにおける促進輸送型糖輸送体の量が対象群より上昇した。ところが、能動型糖輸送体は神経伝達物質によりICMやAPMへの移動が認められた。加齢に伴って刺激によるその移動は低下した。 3)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動の阻害 上述の移動はサイトカラシンDやツブロゾールCで前処理した切片では認められず、ツニカマイシンで処理してもこの移動は阻害された。 以上のことから唾液腺において糖の輸送は神経系及び内分泌系によって調節されており、糖の輸送が亢進している時にはAPMとBLMで糖輸送体の増量が認められた。
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