研究概要 |
今年度は平成10年度に引き続きラットを用い黒質網様体(SNr)と三叉神経運動核(Mo5)の電気生理学的結合について例数を増やし検討を加えた。麻酔下ラットのSNr背外尾側部に同心円電極(外径0.3mm)を刺入し電気刺激を加え(1.5s間隔)、同側Mo5細胞をガラス管電極(pontamin sky blue:抵抗15MΩ)を用い細胞外記録を行い、順行性刺激応答を記録。刺激後のMo5細胞の自発発火を100〜150回加算しPSTHを作成、刺激効果について検討した。その結果、刺激部位が的確であったものにおいて、0.2msecの持続時間、0.3mAの刺激強度の刺激閾値で潜時約3msecの興奮性効果が17個の神経細胞にみられた。これは推測されているSnrからMo5への脱抑制作用を裏付ける結果と考えられた。SNr刺激部位は大脳脚に近接しており,大脳脚刺激またはより深部の三叉神経節の逆行性刺激の可能性も考えられるが,刺激応答の潜時は刺激ごとに完全に一致していない。刺激部位は限局している。刺激強度の閾値は報告されているSNrから反対側上丘投射の電気生理学的報告とほぼ同様である点より否定されるものと考えられた。記録されたこれらのMo5神経細胞は報告されているmyotopographyより、閉口筋支配細胞であることが推測された。一方,開口筋支配であるより深部のMo5神経細胞には刺激応答はみられなかった。Mo5近傍のpremotor neuronを介するMo5への投射様式は閉口筋支配,開口筋支配細胞に対して異なる生理作用が報告されており,本研究結果は,臨床的にみられる大脳基底核症状のオーラルジスキネジアの病態を反映するものと考えられた。
|