研究概要 |
ヒトの癌の多くは環境発癌であり、環境中の発癌物質に対する宿主の代謝能の違いが発癌感受性の個人差を生み出していると考えられている。私たちは、芳香族化合物の代謝に関与する薬物代謝酵素N-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)1,2、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)P1,M1,T1の遺伝子多型と、口腔扁平上皮癌の発症との関連性について検討した。 患者と健常者の末梢白血球よりゲノムDNAを抽出し各種PCR法をおこない、以下の結果を得た。1.NAT1^*10alleleの出現頻度は、日本人ではCaucasianと比較して有意に高く人種差があることが明らかになった。2.口腔扁平上皮癌患者におけるNAT1^*10allele、GSTP1 AG,GG遺伝子型、GSTM1 null遺伝子型の出現頻度は健常者と比較して有意に高く、NAT1^*10allele、GSTP1、GSTM1と口腔扁平上皮癌の発癌リスクとの関連が示唆された。3.NAT2の推定遅延型、GSTT1 null遺伝子型の頻度は、口腔癌患者、健常者群の間で統計学的な有意差は認められなかった。これらの知見から、口腔扁平上皮癌の発生に関してNAT1,GSTP1、GSTM1が遺伝子的背景の一つをになっている可能性が示唆された。
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