研究概要 |
中枢性筋収縮抑制機能を知る方法としては痛覚防御反射を応用したExteroceptive suppression(以下ES2と略す)の測定が有効であり、この方法を顎顔面非対称症例を含む咬合異常者に応用し咀嚼筋筋活動の非対称性を引き起こす要因の検索を行った。 【被験者について】新潟大学歯学部附属病院矯正科に来院した咬合異常,および顎変形症を主訴とする者、学生、医局員ボランティアに以下の項目について測定記録を行った。 【誘発筋電図の刺激および記録、解析について】被験者に下顎中心咬合位で軽度の噛みしめを指示し、電気刺激をオトガイ部皮膚に行った。このときの咬筋,側頭筋の筋活動を双極表面電極を用い,筋電図用増幅器(AM-601G:日本光電社製)にて増幅後データレコーダに収録すると共にブラウン管モニタにて観察した.誘発されたES2を評価するために,筋活動電位はA/D変換ボードを通じてコンピューターに入力し,筋活動分析用ソフト上にて解析した。被験者には研究目的・研究方法を説明し、同意を得た上で上記の研究を行った。 【結果と考察】学生、医局員ボランティアの咀嚼筋活動分析では、いわゆる咬合異常とES2についての一定の関連性は認められない。一方、顎顔面非対称症例の分析では、学生、医局員ボランティア同様に一定の傾向は認められなかった。しかし症例によってはES2が短縮している症例も認められた。すなわち、このような症例ではその顎顔面の変形(非対称)の成り立ちに咀嚼筋の中枢性筋収縮抑制機能障害の関与が否定できない。つまり、顎機能異常者(TMD)と顎変形症症例の関連性の要因の一つに中枢性筋収縮抑制機能障害の関与が考えられた。今後も、症例数を増やすとともに一つ一つの症例に対してより詳しく分析する必要があると思われる。
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