研究概要 |
歯周ポケットには数百種類の細菌種が棲みついており、その中で、病原因子を持つ歯周病関連細菌の種類と量が、歯周病の病態及び進行に深い関係があるとされている。しかし、培養を中心とした口腔領域からの細菌の分析は、一般に過程が煩雑で時間と労力がかかるのが現状である。そこで、培養に代わる簡便で、迅速な、臨床細菌分析方法の確立を図るため、PCRによる歯周病関連細菌の検出を試みた。 歯周病関連細菌といわれるActinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)、Porphyromonas gingivalis(Pg)、Treponema denticola (Td)の培養菌株(各々、Y4株、ATCC33277、ATCC33520)からDNAを抽出し、その16S ribosomal RNA遺伝子を、細菌種特異的primersを用いてPCRで増幅した。さらに迅速性を図るため、multiplex-PCRによる検出を試みた。 その結果、種特異的な3種類のprimersを混在させたmultiplex-PCRにより、Aa-,Pg-,Td-特異的なPCR産物(各々273,518,945bp)が得られた。また、成人性歯周炎患者(8名)の歯周ポケット試料からも同様な結果が得られたことから、16S rRNA遺伝子をターゲットとしたmultiplex-PCRは、多種類の歯周病関連細菌を迅速に検出・同定できる方法であると考えられ、歯周病のリスク診断の一助となる可能性を持っていると考えられる。
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