研究概要 |
本研究では,これまで個々に評価されてきた種々の齲蝕活動性試験を用い,平成10年度は現在の口腔内状態との相関性について,平成11年度は齲蝕発生に対する予測能について経年的に同一条件下で比較検討した。今年度は,本研究の主旨に保護者の同意が得られ,昨年度に資料採集できた園児118名の内70名を対象に,口腔内検診および3種の市販の齲蝕活動性試験(CAT,DSM,DLB)を前年度と同様に実施し1年間の経年的変化を記録した。分析方法は,各年度の口腔内検診結果より1年間の齲蝕増加歯数を算出し,細菌学的指標である各齲蝕活動性試験ならびに非細菌学的指標である過去の齲蝕経験歯数の齲蝕発生に対する予測能について,特異度(SP),敏感度(ST),陽性反応的中度(PVP),陰性反応的中度(PVN)を用いて検討した。結果,今年度の齲蝕罹患者率は81.4%一人平均dmftは5.30本あり,昨年度よりそれぞれ6.8%,0.51本増加していた。各指標のスクリー二ング基準をd mftを2本以下/3本以上,CATを1.5以下/2.0以上,DSMを0,1/2,3,DLBを0,1,2/3,4として予測能を求めたところ,妥当性(SP+ST)は,CAT1.23,SM1.20,dmft1.16,LB0.97の順で高かった。また,PVPはSM0.78,CAT0.76,dmft0.72,LB0.68の順であり,PVNはCAT0.44,SM0.43,dmft0.43,DLB0.35の順であった。今回検討した予測能は,対象集団の疾病罹患率に影響を受けるが,本対象者では齲蝕罹患率が80%を超えており,このことがPVNの低い値につながっていると考えられる。今回用いた指標の内,DLBは本対象者のような低年齢児においては操作性の観点からもその使用が難しいと思われ,総合的に考慮するとCATが単独使用では最も有効な指標であることが示唆された。
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