研究概要 |
Bone morphogenetic protein(BMP)はTGF-β superfamilyに属するタンパク質であり、異所性の骨形成活性で示されるように、強力な骨形成促進作用をもつことが知られている。矯正学的な歯の移動において、牽引側では骨添加、圧迫側では骨吸収が生じるが、このような骨リモデリングの機構はよく解っていない。我々は本研究において、矯正学的な歯の移動においてみられる骨リモデリングにおける、BMPの役割の解析を試みた。 Waldoらの方法によりラットの上顎臼歯を移動させ、経時的にサンプリングを行った。これらの顎骨から作製した切片を用いて、歯周組織におけるBMP-2,4,6,7の遺伝子および蛋白の発現の検討をin situ hybridization、immunohistochemistryにより行い次の結果を得た。 1,定常状態においては、BMP-2,4,7mRNAを発現する細胞は歯周組織において全く見られなかった 2,実験的な歯の移動において、歯根膜細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞および移動歯の歯根先端部のセメント芽細胞において、強いBMP-2,4,7mRNAの発現が見い出された。 3,immunohistochemistryにより、実験的な歯の移動時に、歯周組織におけるBMP-2,4,7の蛋白発現の増加が確認された。 4,BMP-6mRNAを発現する細胞は定常状態、実験的な歯の移動のいづれにおいても見い出されなかった。 以上より、矯正学的な歯の移動における骨リモデリングにおいて、BMP-2,4,7が関与していることが示された。現在、我々はこれらの研究結果について、論文投稿準備中である。
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