研究概要 |
抗菌,および抗腫瘍活性を有するkinamycin類の立体選択的全合成研究において,我々は,平成10年度までにABC環に相当するbenz[f]indanoneのモデル化合物の合成,およびBC環に相当するindenoneとDanishefsky dieneとのDiels-Alder反応によるD環の構築を達成した.平成11年度において,我々はkinamycin類がABC環で必要とするすべての酸素官能基を持つbenz[f]indanoneを1,5-dihydroxynaphtholから8行程で合成した.一方,BCD環を持つモデル化合物についてD環上に酸素官能基の導入を検討した.D環上のエノンをシロキシブタジエンに変換し,エノールエーテル部位をOsO_4酸化してヒドロキシケトンとしたのち,DIBAL還元してtrans-ジオールを選択的に得た.これをケタールで保護したのち,残るオレフィンのOsO_4によるジヒドロキシル化を試みたが,目的とする立体異性体は得られなかった.しかし,ジオールをかさ高いTBS基で保護したところ,環構造の変化がNMRより観察され,選択性の逆転が期待された.実際,このもののOsO_4によるジヒドロキシル化により,酸素官能基がcis,trans,transの目的の相対配置を有するD環が得られた.今後,これまでに検討された合成反応を組み合わせることにより,kinamycin類の立体選択的全合成を達成できるものと考えられる.
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