研究概要 |
芳香族アニリド類の二級アミド結合は一般にトランス型をとるのに対して、アミド基窒素原子上にメチル基を導入して得られる三級アミド結合はシス型を優先する。この立体特性は芳香族ウレアや芳香族グアニジン類でも一般的に起こり、N,N'-dimethyl-N,N'-diphenylureaおよびN,N'-dimethyl-N,N'-diphenylguanidineは2つの芳香環が向かい合った立体構造をとる。これらシス型を優先するN-N'-dimethylurea基またはN,-N'-dimethylguanidino基を用いて複数の芳香環を連結することによって、芳香族多層構造を有する化合物を合成した。合成した化合物のうち、para置換およびmeta置換五層グアニジン体は水溶性を有し、DNAに強い親和性(Ultrafiltration AssayおよびCD tiration experimentにより算出したDNA結合定数が10^6-10^7 M^<-1 >)を有することがわかった。また、熱融解実験においても種々のDNAに対して顕著な融解温度の上昇をもたらした。構造的には末端芳香環を持たない化合物のDNA親和性が非常に弱いことから、芳香環五層構造が重要であることがわかった。また、^1H-NMRによりその結合構造を詳細に解析した結果、ドデカマー(CGCGAATTCGCG)_2に対して、そのマイナーグループに結合していることが示唆された。その結合位置は3^' CGAAT-5^'配列部位で、4つのグアニジノ基のうち2つがマイナーグループの中へ入り込んで核酸塩基と水素結合していると推測された。この結合様式は自動ドッキングスタディプログラムADAMを用いたシュミレーションによって計算化学的に導いた構造と良く一致していた。これらのグアニジン誘導体は既存の化合物とは全く構造の異なるマイナーグループ結合性分子として興味深い。
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