研究概要 |
光学活性ガリウム-リチウム-ビナフトール錯体(GaLB)を用いるエポキシドのフェノール類による不斉開環反応の収率面の改善を目的として、ビナフトールに代わる不斉配位子のデザイン、合成を行った。ビナフトールの4,4'-位、6,6'-位あるいは7,7'-位にアルキル置換基を導入した数種の配位子を合成し、それらをジリチウム塩とした後に塩化ガリウムと反応させることにより、ガリウム-リチウム異種金属含有錯体を調製した。残念ながら、それらはいずれも上記GaLBより高い触媒活性は示さなかった。次に、配位子の電子密度を下げれば、錯体のブレンステッド塩基性が向上し反応性の改善が可能になると考えた。そこで、ビナフトールを白金触媒下水素添加し、5,5',6,6',7,7',8,8'-オクタヒドロビナフトールを合成した。本配位子をジナトリウム塩とした後に塩化ガリウムと反応させることにより調製した新規ガリウム錯体(GaSO)はGaLBに比して非常に高い触媒活性を有することが明かとなった。シクロヘキセンオキシドと4-メトキシフェノールの反応においては、反応時間がこれまでの約15分の1に短縮され、化学収率もGaLBの場合の50%から75%にまで改善することに成功した。GaLB触媒下では全く反応の進行しなかった鎖状のエポキシドの開環反応も70%を越える良好な収率で進行した。GaSOは不斉誘起能に関してはGaLBにいくらか劣るため、GaSO錯体を基盤としてさらに高活性、高立体選択的な錯体触媒の開発に現在取り組んでいる。また、本触媒的不斉開環反応によって光学活性体として得られたピロリジン誘導体を出発原料として数工程で文献既知の合成中間体へと誘導し、医薬アニソマイシンの初の触媒的不斉形式合成を達成した。
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