研究概要 |
昨年度において、筆者は、4-および5-ニトロ-1-ヒドロキシインドールの合成に成功し、これらが、アミドカップリング機能を持つこと、その能力が、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールと同等であることを認めた。また、当研究室の仮説では、1-ヒドロキシトリプトファンが生体内に存在し、上述の機能を果たしている可能性をも示唆している。そこで本年度は、 1。本仮説の検証を目的として、様々な構造を持つ、Nb-置換1-ヒドロキシトリプタミン、1-ヒドロキシトリプトファン誘導体の合成を行った。さらに得られた化合物を酸で処理すると、インドール化学では極めて珍しい求核置換反応が5位で位置選択的に、しかも効率良く起こることを見出した。この新反応を利用することにより、従来極めて得がたかった、5位に酸素官能基やハロゲンを持つトリプタミン、トリプトファン誘導体が簡単に合成できるようになり、合成化学上有益な成果を得た。2。さらに、9-ヒドロキシ-β-カルボリンの最初の合成にも成功した。これら化合物と酸との反応では、骨格の転位反応が起こり、3,3-二置換オキシインドールを生成するという、約10年に渡り検討されてきた、仮説で予言されていた、新反応をついに発見することが出来た。3。以上の1、2の事実は、もしも天然物として1-ヒドロキシインドール化合物が存在したとしたら、従来のアルカロイド抽出操作では、変化体のみが得られるという可能性示唆している。天然物化学領域に、今後の重要な検討課題を提示することができた。 未開拓領域で、新知見の宝庫である1-ヒドロキシインドール化合物群のについて、引き続き基礎研究を展開中である。
|