研究概要 |
アンチラトキシンは,1995年Gerwickらにより海産藍藻Lyngbya majusculaより単離,構造決定された環状ペプチドであり,3置換オレフィンを含む共役ジエン,カルボニル基に非共役した末端オレフィン,N-メチルアミドの部分がシスに固定されているなど構造的に興味深い点が多い.また生物活性については赤潮毒として有名なブレベトキシンに匹敵する強い魚毒作用を示すことが報告されている.そこでこの強い活性と特異な構造を有するアンチラトキシンの合成研究に着手し,昨年度において世界初の全合成に成功するとともに,提出構造である4S,5R-体というのは誤りであることを指摘して,真の構造は4R,5R-体であることを明らかにした. そこで今年度は4位と5位の考えられる立体配置のうち,残り2つである4R,5S-体と4S,5S-体の合成を行った.合成手法はアルドール反応における不斉補助基をそれぞれエナンチオマーのものを用い,昨年度開発したルートに従って行った.更に今回合成したものと,昨年度合成したものの合計4つのアンチラトキシン誘導体の金魚を用いた魚毒活性を調べたところ,天然と同じ立体配置をもつ4R,5R-体は天然物と同等の強い魚毒性を示したが,残りのものはほとんど魚毒性がみられないという興味深い結果が得られた.現在この強い魚毒活性の作用機序を調べているところである.
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