研究概要 |
糖化合物の合成には煩雑な水酸基の選択的保護や困難なグリコシル化反応など、依然として解決すべき問題が数多く存在している。これらは糖化学の発展ならびに糖質を用いた医薬品の開発等において必ずクリアしなければならない問題である。そこで我々はこれらの欠点を克服すべく、グリコシド結合をアミド結合に変換した糖類縁体の合成を行った。まず、β-1,2,β-1,3,β-1,4,β-1,6,アミド結合をそれぞれ有する糖類縁体オリゴマーを構築するために、ビルディングブロックとして1位にβ-カルボキシル基を、2,3,4,6位のいずれかにアミノ基を導入したグルコース型糖類縁体を合成した。その後、各種ペプチドカップリング試薬により結合させることによって、目的とするオリゴマー(四量体)を得ることが出来た。次にこれらの四種類のオリゴマーの水酸基をO-硫酸化して、β-1,2結合とβ-1,6結合をもつ二量体から四量体についてそれらの生物活性を検討した。その結果、抗HIV活性について二量体から三量体に関してはほとんど活性が見られなかったが、四量体ではそれぞれIC_<50>=25μM、1μMという強力な抗HIV活性が見られた。また、E-,P-セレクチン表現型COS細胞を用いてシアリルルイスX依存性細胞接着阻害活性についても調べたところ、興味深いことにβ-1,2結合を有する四量体のみがP-セレクチンとシアリルルイスXの接着に対し強い阻害活性を示した。さらに、これらのオリゴマーのCDスペクトルを測定した結果、β-1,2結合の四量体及び六量体がα-helix構造を持つことが示唆された。現在NMRなどを用いてさらに詳しい構造を調べている最中である。これらの結果が示すように、将来糖鎖-蛋白間相互作用の解明や医薬品開発の新手法などといった点で非天然の糖類縁体の開発はますます重要になるであろうと思われ、今後のさらなる成果が期待される。
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