研究概要 |
1.基質分子の非共有結合的認識を目的とした,分子認識のための官能基の共有結合的な導入法開発に関する検討:昨年度実施した手法はジアミンの認識を前提としていたがHPLCによるジアミン類の分離には問題が多いことがわかり,多種類の基質のアッセイが容易ではなかった.そこで次にアミノ基をポリマーに固着し,カルボン酸を認識すべく検討を行ったが,生成したアミドの加水分解が困難を極めた.現在は容易に生成,分解できるイミンを用いてアルデヒドの刷り込みを検討中である. 2.反応触媒としての利用に関する検討:昨年来行ってきた,「2位に置換基を有するマロン酸誘導体」を鋳型に用いた加水分解触媒ポリマーの調製では,p-ビニルベンジルアミンとの縮合によりジアミドに変換した後に重合するという当初の計画は,上記の知見からテンプレートの加水分解が困難であると判明したので,変更を余儀なくされた.そこで,イミンを経由するインプリント法に切り替えるべくテンプレートを合成中である.一方,ポリマーの配座変化を利用した活性調節機能を有する鋳型触媒を開発すべく,既存の手法に従ってリン酸エステル型の鋳型を幾つか合成中である.これらのうちの一つについては従来の方法に従って加水分解能の評価を終えたところであり,次の研究へ進むための準備段階にある. 3.その他:上記の実験に必要なジカルボン酸のアミド化は,スチリル基の重合を起こさないような温和な条件下に行う必要があり,従来のアミド化剤はいずれもうまく機能しなかった.このような背景のもとに,この目的を達成すべく研究代表者らが新たに開発を行ったトリアジン型化合物は,予想以上に優れた縮合能を示すことが分かり,論文発表することができた.現在は更に詳細な検討を実施中である.
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