昨年度は苦労の末、正常に増殖するヒト7番染色体を含むDT40由来雑種細胞(DT40ー7R)の取得に成功した。微小核細胞融合法により、この細胞のヒト7番染色体をD群不死化細胞株Met5Aへ導入したところ、分裂停止を誘導したことから、雑種細胞はD群不死化抑制遺伝子を安定に保持していることが確認された。そこで今年度は、PCR法によりヒトDNAをクローン化し、テロメア配列を含む改変ベクターへ挿入後、DT40細胞へトランスフェクションを行い、特定領域のみを欠失したヒト7番染色体の構築を試みた。 現在までに、ひとつの短腕領域(7p11-13)および2つの長腕領域(7q21-22、7q31)のDNAを含む3種の改変ベクターを構築し、DT40細胞へトランスフェクションを行っている。安定形質導入クローンの中で、遺伝子相同組換えを起こしたと思われるクローンが幾つか得られている。しかし、いずれもテロメア配列が染色体の中に組み込まれており、特定領域を欠失したヒト7番染色体を含むクローンはまだ得られていない。今後、現状よりもトランスフェクションの規模を大きくし、目的クローンの取得を目指す。 平行して、リバータント解析によるマッピングも試みた。7番染色体の導入により分裂停止したMet5A細胞より、増殖を再開した24クローンを分離した。これらクローンよりゲノムDNAを調製し、STSマーカーを用いた多系解析を行っている。増殖再開クローンで共通して欠失している領域の限定を目指しているが、多数のマーカーの解析が必要なため、結論を出すのにもう少し時間を要す。
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