研究概要 |
1. ヒト肝の3種の3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(3α-HSD)アイソザイムと約80%の相同性を示し、ヒト骨髄性白血病前駆細胞から単離されたcDNAにコードされる新規酵素(DBDH)を大腸菌内で発現、精製した。DBDHは弱い3α(17β)-HSD活性を示した他、従来のプロスタグランジン(PG)D_2還元酵素と比べて、非常に強い9α,11β-PGF_2/PGD_2の酸化還元活性を示した。また、DBDHは、非ステロイド性抗炎症剤により、他の3α-HSDアイソザイムよりも強力に阻害された。また、DBDH mRNAは肝、腎、肺を含むヒトの11種の組織に検出された。 2. DBDHとヒト肝の3種の3α-HSDアイソザイムのイソプレニルアルコール類に対する触媒特性を検討した結果、DBDHのみがファルネソールやゲラニルゲラニオールに対し、9α,11β-PGF_2に匹敵する高い酸化活性を示した。 3. ヒト組織(腎の正常部とガン部2例ずつ、正常肝2例)およびヒト腫瘍細胞における本酵素の発現をDBDHに特異的な基質を用いた酵素活性分析により検討したが、これらの組織ではDBDHの発現量は非常に低かった。しかし、DBDH抗体を用いたイムノブロット分析の結果、HepG2細胞ではDBDHが他のアイソザイムよりも多く発現している可能性が示唆された。 4. エタクリン酸(50μM)で処理したHepG2細胞ではDBDH mRNAの誘導と共に、ファルネソール脱水素酵素活性が約1.2倍に増大した。いくつかの腫瘍細胞ではゲラニルゲラニオールおよびその酸化体ゲラニルゲラノイン酸によってアポトーシスが誘導されるので、DBDHはこれらのイソプレニルアルコール類の酸化代謝を促進し、アポトーシスの誘導やその阻止に関わっている可能性がある。
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