研究概要 |
疑似糖及疑似糖を含む糖鎖類似体は、生体機能解明のためのツールとして、あるいは様々なリード化合物として大いに期待されており、その効率的供給法の確立は重要な課題となっている。疑似糖の不斉合成の際に問題となる異性体の生成や、その分離の問題を最小限に抑え、光学純度の高い疑似糖を効率的に供給する方法論の確立を目指し検討した結果、以下の成果を得た。 1)シクリトール型疑似糖の不斉合成 シクリトール型疑似糖の不斉合成のための新しい不斉合成素子を、独自に見い出した。C2対称ビススルホキシドを用いた4-シクロヘキセン-1,2-ジオールの不斉非対称化により高選択的に合成することに成功するとともに、不斉合成素子への立体選択的な官能基導入法とその立体制御法に関する問題点を解決し、クエルシトール類の系統的合成法の基礎を確立することができた。また、実際に、クエルシトール類の一つであるgala-クエルシトールに本方法論を適用し、簡便かつ高選択的な合成を行うことができた。 2)複素環疑似糖の不斉合成 多不斉中心を有する疑似糖を効率的に合成する合成戦略の一つとして、メソシクリトールの不斉非対称化による多不斉中心の構築を検討した結果、我々の方法論が多不斉中心基質の合成にも有効であることが明らかとなった。得られた化合物はわずかの化学変換により強力なキチン分解阻害作用を有するアロサミンの活性中心であるアロサミゾリンに効率良く導くことができ、多不斉中心複素環疑似糖の合成に有効な手法を確立することができた。 3)鎖状ポリオール合成への応用 シクリトール類の鎖状類縁体ともいえるポリオール類合成への展開を目指して、C4ユニットとして利用価値の高いと考えられるメソエリスリトール誘導体の不斉非対称化を検討した結果、水酸基の保護基の選択より、目的を果たすことができた。
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