研究概要 |
内因性神経活性物質イサチン(モノアミンオキシダーゼ活性阻害物質)と病態との関連性について前年度より研究を継続し以下の結果を得た.本年度は,イサチンが心房性ナトリウム利尿ぺプチド(ANP)受容体と結合し拮抗作用を示すとの報告に着目し,特にカテコールアミンと関連の深い高血圧について検討した. l.パーキンソン病患者の尿中イサチン濃度を継続検討した.尿中イサチン濃度は重症度(Hoehn&Yhar分類)が増すにしたがって上昇し,II度,III度,IV度の群において有意に上昇した.前年度までのデータに症例数を加えたがこれまでの結果と同様であった. 2.高血圧や脳卒中のモデル動物である脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)の尿中イサチン濃度は正常血圧ラット(WKY)に比較して有意に高値を示した.SHRSPの血漿ノルエピネフリン濃度においてもWKYに比較して有意に高値を示した. 3.専門医によって高血圧と判定された患者の尿中イサチン濃度は,正常血圧群に比較して有意に高値を示した. 4.尿中イサチン濃度と同時に測定したANPおよび脳内ナトリウム利尿ぺプチドとの間には有意な相関は見られなかった.このことは心疾患患者の症状が発作性心房性頻拍症,心筋梗塞,発作性上心室頻拍症,大動脈弁狭窄症など複雑多岐であるために相関が見られなかったものと考えられた.今後は各分類で症例数を増やし検討が必要であると思われる. 以上より,高血圧発症や高血圧進展の一部には生体内でのイサチンの増加が関与していることが示唆された.現在,イサチンとANPとの関連性について,一定の条件下で検討するためラットを用いて遂行中である.
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