研究概要 |
前年度に考案したフットケア方法の生理的効果について,足浴あるいはマッサージによる単独効果であるのか,足浴とマッサージの相乗効果であるのかを明らかにするために基礎的実験を行った。研究の同意が得られた健康な高齢者10名を対象にして,足浴,マッサージ,フットケア,安静臥床のみ(コントロール)の実験をランダムな順番で行った。ケアの生理的効果の指標として,被験者の心拍数,血圧,口腔体温,下肢深部皮膚温の測定を行った。ケア前の測定値を基準値とし,ケア後の時間経過における変化率を用い,分析を行った。その結果,(1)いずれのケア群においても血圧,口腔体温の変動は少なかった。(2)マッサージ,フットケア群は,コントロール群と比較してケア後有意に心拍数が減少した。足浴群について統計的有意差はなかったが心拍数の増加が認められ,ケア後10分以降に心拍数の急激な減少が認められた。(3)いずれのケア群においても下肢の未梢温が上昇されるが,温熱刺激を利用する足浴,フットケア群はケア直後から下肢温の上昇が認められた。以上より,足浴あるいはマッサージ単独でも効果はあるが,この二つを組み合せによってさらに生理的効果が期待できる。 考案したフットケアの睡眠への効果を明らかにするために,入眠困難の訴えがある成人女性2名に対して,就寝前にフットケアを実施し,起床後に質問紙による主観的効果の調査を行い,ケアをしないコントロールと比較した(計5日間)。その結果,フットケアをされることの気持ちよさの主観的評価は高かったが,フットケアをされたからといって常に入眠が促進されなかった。その理由の一つに,被験者の日中の活動の程度,精神的ストレス等の影響が考えられた。
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