本研究は、子どもに健康問題が生じた際、母親が子どもの心身の変化をどのように認識して医療機関への受診を決定するのか、その過程を分析し、母親の受診行動にみられる特性を解明することから小児医療での育児支援について検討することを目的としたものである。現代の母親の行動特性が、わが国の医療事情(第1次・第2次・第3次医療機関と分類される)の状況下で医療機関ごとに特徴づけられるか否かを系統的にみるため、これまでに得られた第1次・第2次医療機関での結果を踏まえ、平成11年度は第3次医療機関を受診した母親へと対象を拡大して調査を実施した。 その結果、母親の行動特性は医療機関ごとに比較しても顕著な差異は認められず、共通する母親の特徴が浮き彫りになった。中でも注目すべきことは、1.母親役割をとることへの意識が高い、2.「子どもは大人とは違う(別の存在である)から分からない」という子ども観により、母親が子どもに起きている心身の変化を多角的にみることができず不安を増強させるという結果が得られたことである。また、そのような母親の役割意識や子ども観が適切な判断や対応を阻害し、早期受診や医療者への依存傾向を引き起こす要因となっていること、それゆえに初診時の医療者の対応によりネガティブな影響を受け易い可能性があることが明らかになった。 以上、母親の行動特性は医療機関ごとに特徴づけられるものではなく、共通する母親の特性としてあらわされた。よって、育児支援としての介護介入の方向性は、いかなる医療機関においてもその共通する母親の行動特性に着目していくことが重要であると示唆された。これらの知見は現在小児関連学術誌に投稿準備中である。なお、既に一部を第19回日本看護科学学会(1999.12)で報告した。
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