研究概要 |
本研究は加齢がもたらす血液循環能力の変化について,骨格筋毛細血管の形態的な側面より検討した.さらに,老齢期の動脈の機能的な側面についても検討を加えた.実験には3ヶ月月齢と19〜22ヶ月齢のwistar系雄性ラットを用いた.毛細血管の形態観察は生体灌流固定法を用いた.これは毛細血管が拡張した状態で観察できる利点をもっている.形態計測の結果,毛細血管数と毛細血管内腔の形態指標(毛細血管内腔の面積,周囲径,直径)には両群で統計的な有意差が見られなかった.その一方,筋線維の横断面積は老齢ラットが有意に低値を示した.このことは,この月齢時にあるラットの骨格筋では加齢にともなった筋委縮が生じていることを示している.したがって,毛細血管の加齢による形態変化は,筋線維の委縮といったような加齢現象よりも先行して起こらないことを示唆している.また,老齢ラットの動脈の拡張性について,アセチルコリンと一酸化窒素ドナー(NOC-18)に対する反応性より検討した結果,老齢ラットでは拡張の応答性が若齢ラットよりも顕著に低下していることが明らかとなった.以上のことから,加齢がもたらす血液循環能力の変化は,毛細血管のような微小循環系の形態変化よりも,動脈などの血流調整を行っている部分での機能変化の方が先行して生じる可能性が明らかになった.
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