研究概要 |
閉経後骨粗鬆症の実験モデルとして卵巣摘出(OVX)ラットを用い、運動強度の違いが骨に及ぼす影響を力学的強度試験と二重エネルギーX線吸収法(DXA法)から検討した。実験にはWistar系雌性ラット(n=30)を用い、以下の5群で比較した;1)偽手術対照群(SHM),2)OVX対照群(OVX),3)OVX+低強度運動群(OVX-L),4)OVX+中強度運動群(OVX-M),5)OVX+高強度運動群(OVX-H)。12週齢時にOVXおよび偽手術を施した。その後5ヶ月を経過し、大腿骨の全骨レベルの骨量(骨塩量・骨密度)減少をDXA法で確認後、トレーニングを開始した。スクワット装置に装着するおもりの重量は、0g(OVX-L)、750g(OVX-M)、1500g(OVX-H)とし、スクワット動作を1日10回×2セット、週3日、計10週間とした。OVXは全身性の骨量減少を引き起こした(大腿骨、脛骨、上腕骨、腰椎)。大腿骨では、近位部・骨幹部・遠位部のすべてでOVXによる骨量の減少がみられ、運動は強度依存的に骨量を回復させた。この効果は骨幹部よりも近位部・遠位部で顕著であった。大腿骨の力学的特性に関して、骨幹部ではOVXによるスティフネスの低下は運動強度依存的な回復を示した。一方、頸部ではOVXによる影響を受けることなく、OVX-H群が他の4群よりも有意に高い破断荷重・スティフネスを示した。脛骨では、OVXによる有意な骨量減少のみられた近位部よりも、OVXによる影響を受けなかった骨幹部で顕著な運動強度依存的な骨量増加が観察された。非荷重骨の上腕骨での骨量減少が運動の影響をまったく受けなかったことは、全身的な液性因子よりも局所的な力学的因子が運動による骨量変化の多くを調節していることを強く示唆している。以上より、運動は部位特異的に、そして運動強度依存的にOVX(エストロゲンの欠如)にともなう骨量・骨強度の減少を回復させることが明らかになった。これらの結果が骨内の細胞(骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞)のいかなる振る舞いによるものかについて、組織形態計測法からさらなる検討をすすめている。
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