研究概要 |
火山泥流堆積物は,成層火山周辺に普遍的に見られる堆積物で,発生頻度が高く,被災地域や,災害規模が大きくなることから,火山災害の中でも最も重要な現象と考えられる.本研究では,主に玄武岩を噴出する富士火山,安山岩から石英安山岩を噴出する妙高火山および石英安山岩から流紋岩を噴出し,大規模な軽石噴火を行っている支笏火山を対象として,これらの火山周辺に分布する火山泥流堆積物を認定し,その成因,規模,分布を明らかにし,泥流の発生時期および発生頻度を火山灰層序,歴史史料をもとに明らかにして,泥流の発生をそれぞれの火山の噴火史および浸食史の中で位置づけることを目的として行った.その結果,以下のような成果を得た. 泥流堆積物とその他の流れ堆積物との判別には,堆積構造,岩種組成,粒度組成が指標となる.しかし,火砕流,山体崩壊の堆積物は,流下過程で泥流に漸移的に変化するため,判定が困難な場合がある. 妙高火山においては,6ka,4kaの火砕流噴火,および20kaの山体崩壊堆積物と関連する泥流堆積物が確認された.これらの大規模な泥流堆積物は,現在の高田平野の沖積層下にも認められ,高田平野の埋積にも大きく寄与したものと考えられる.また,40kaの最新の噴火以降に少なくとも4回の非噴火性の小規模泥流事件を確認した.支笏火山においては,40kaのカルデラ形成噴火の直後に大規模な泥流が集中して発生している.火砕流堆積面が開析される前に,シート状に広がったと思われる泥流堆積物も確認された.富士火山では,約20kaに大規模な泥流が集中して発生する時期がある.堆積物の特徴から噴火に関係して発生した泥流と考えられる.この泥流は,流下過程で岩相が大きく変化する. このように,火山泥流は噴火に関連して発生したものが体積としては大きな割合を占めるが,噴火の形態,流下距離,運搬・堆積経路の地形によって堆積物の特徴は大きく変化する.
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