研究概要 |
マルチメディアやインターネットが学校教育現場に導入されつつある。そして,それを活かす教育実践が設計・実施されている。しかしながら,その評価を詳細におこなった研究は皆無に等しい。本研究は,平成10年度,マルチメディアを活用した授業を実践している学級(小学校6年)を1年間追跡した。 平成11年度は,まず,平成10年度に得られたデータの分析・考察を試みた。その結果,活用経験の増加によって,子どもたちはマルチメディアを主体的な「道具」としてイメージするようになる,しかしながら他者との「コミュニケーションの手段」,とりわけ「共同作業の舞台」としてのイメージは簡単には構築されない,ということが明らかになった。また,テレビに比べて,そして対照群に比べて,子どもたちはマルチメディアを「道具」としてイメージしやすいこと,も明らかになった。 また,平成11年度は,平成10年度にも研究対象とした教師に対してインタビュー調査を実施し,より実践的に授業評価の視点を抽出することを目指した。具体的には,6回に渡って,教師が,子どもたちの情報機器活用,とりわけマルチメディアやインターネット利用のどのような行動に注目しているかを継続的に記述した。 事例分析の結果,1)5月までは教師にも評価の視点が確立していないこと,2)評価の視点は「接触とスキル習得」,「課題志向性」,「利用の個性化」に大別できること,3)マルチメディア等への接触やスキル習得は年間を通じた評価視点であること,4)利用の個性化という評価視点の導入にはかなりの時間を要すること,5)9月や1月などの長期休業明けの時期には,特定の子どもたちに対して適用する評価視点があること,などが分かった。
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