研究概要 |
大正・昭和初期に奈良女子高等師範附属小学校で,低学年の授業改造を契機として取り組まれた合科学習実践は,その後の我が国の低学年教育に大きな影響を与えた。岩瀬六郎は低学年の「大合科」から中学年での「中合科」ヘの発展を,教科学習への分化によらず「学習問題の発展」による子ども自身の問題解決を方向づける指導によってその展望を試みた。この背景には岩瀬が一貫して「心情陶冶」による知識と意識の統一によって,子どもの生活の中での実践力の獲得を志向していたことが明らかとなった。 これらはいずれも,奈良女子大学文学部附属小学校に保存されている資料の三回にわたる収集調査によって,史料整理と分析の結果明らかになったものである。 なお,研究成果は2000年3月17日〜18日に北海道大学教育学部で行われた第44回北海道教育学会で,「岩瀬六郎の合科学習実践 -『学習問題の発展』を指導する授業組織論を中心に-」として発表した。この論文に,奈良女高師附小の現存する一次史料として1928年から1933年までの「学習指導要項目録(1)」と,岩瀬の実践に関する若干の史料を含めて,科研費報告書として公にした。 今後,「学習指導要項目録」および,調査によってマイクロフィルムに納め,整理した「職員会議資料」「学校日誌」等々の資料目録を順次,目録として整理し,公にしてゆくとともに,これまでに研究に取り組んできた,鶴居滋一,山路兵一,岩瀬六郎以外の各訓導の低学年実践論の解明を進めてゆく計画である。
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