研究概要 |
本年度は,前年度研究を進めた「多重解像度制約を用いた設計手法」を,細分割曲面と呼ばれる多面体曲面のクラスに応用することから始めた。パラメータ曲面よりさらに膨大なデータ量を直接扱う多面体曲面には,本研究による階層表現の導入が非常に効果的であり,以下のような問題を解決することができた. 1.多重解像度制約により,多面体曲面の系統だった設計を可能にし,必要となる制約数を減らすことができた. 2.解像度ごとに異なる重みを割り振ることで,多面体形状の滑らかさを効果的に制御できることを示した. 3.さらに解像度ごとの重みの割り当てを,形状の部分部分で変更できるようなモデルを構築し,実現した. 4.計算コストの高い大局的変分制御の代わりに,コストの低い局所的な形状平滑化を導入することができた. 細分割曲面は,ある一定の規則から発生される曲面でその表現範囲も限られるが,本研究においては,レーザー・スキャナ等で取得されたデータを,この細分割曲面のクラスに変換するシステムも合わせて実現している. また並行して,多面体曲面の臨界点(頂上・谷底・峠)や特徴線(尾根線・谷線)等の微分位相幾何特徴を抽出するアルゴリズムを開発・整備し,階層モース理論を導入して多面体曲面を解析する下地を整えることができた.この研究の一部は,既に曲面解析に応用しており,これに付随する講義を学会の研究会で行う予定である. さらに本研究の成果を,国土地理院から取得した地形標高データへの解析に応用し,先の臨界点や特徴線を抽出することにより,地理形状を理解する上での特徴づけを行うことに成功した.加えて上記の曲面の局所平滑化を用いた地形形状の変形操作を可能とするシステムの構築に成功しており,地理情報システム等への応用に向けてシステムの拡張を検討中である.
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