研究概要 |
本研究は,仮説の正しさや一般性などが論理的に定義され,信頼度が高く利用者が理解しやすい学習システム構成の方法論を,論理プログラム処理系をできるだけ自然に拡張して構成することを目標としている。本年度は以下の研究を行った。 1.学習システムを構成するために論理プログラミング処理系に組み込むべき基本的機構を研究するため、昨年度に論理プログラミング中の述語を等式に制限した記述体系を利用することを考案した。そのアイデアを基盤に、帰納関数プログラミングの枠組みを定式化した上で、複雑化という基本演算を定式化した。複雑化は,帰納論理プログラミングにおける反復V演算を等式に導入したものであり,反復V演算はスキップ演算によって実現されるが,複雑化の定式化ではスキップ演算を陽に用いる必要がない。この性質から,複雑化によって反復V演算やスキップ演算の意味を明瞭にすることができ,また仮説の探索空間も減少させることができた。 2.昨年度の研究の帰結から,反復V演算はPlotkinの発見の論理を実現する手法であることが明らかになった。Plotkinの発見の論理では,因果関係が論理で表現できないということが問題となっていた。等式を関数と見なせば,関数は因果関係の表現そのものであるから,複雑化によって,Plotkinの発見の論理実現における問題点の解消を行ったことになる。 3.スキップ演算子はその定義から,新たな概念(述語)の生成に用いることはできない。新述語の生成は学習には不可欠であるにもかかわらず,帰納論理プログラミング研究の初期段階以後注目されなくなってしまった。複雑化の導入により明確になったスキップ演算の意味を用いて,差分に基づく再帰スキームを用いて新たな述語を生成する方法の定式化に成功した。
|