研究概要 |
今年度は,自己免疫メカニズムに学んだ最適化基礎理論構築およびそのエージェントシステムに対する工学応用可能性に関して,以下の研究成果をまとめた. 1.適応的免疫アルゴリズムを用いた多峰性関数最適化 多峰性関数における複数最適解の獲得を目的としたアルゴリズムを構築した.構築した手法は,二種類の独立した記憶機構を導入することにより,既提案の免疫アルゴリズムが有するパラメータ調整の問題を改善し,さらに記憶を再利用した局所探索により探索効率を向上させた.また,巡回セールスマン問題やBipolar Deceptive Functionへ適用し,提案手法の有効性を検証した. 2.マルチエージェントシステムにおける共同注視点に基づく合意形成 免疫メカニズムをマルチエージェントシステムに応用する場合に,各エージェント間でのタスクに対する合意を成立させることが重要になる.この研究では,フォーカルポイントの概念と強化学習のアルゴリズムを用いた合意形成の手法を提案し,マルチエージェント協調問題に適用した. 3.免疫的分業効率化アルゴリズムを用いたマルチエージェント分業問題解決 マルチエージェントシステムにおける分業問題を解決するアルゴリズムを構築した.構築した手法は,(1)免疫システムにおいて自己・非自己を区別する固有情報であるMajor Histocompatibility Complex(MHC)を利用した競合排除,(2)各種免疫細胞間の伝達情報により適切な抗体を産生する枠組である免疫ネットワークを利用した行動生成,という二つの相反する適応を内在しており,これらの相互作用により,効率の良い分業を探索する手法である.その基本性能を検証するため,分業巡回セールスマン問題へ適用した.
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