研究概要 |
2048x2048画素,4096階調という大きなディジタル画像データである胸部X線画像をこの解像度,濃度階調のまま処理することは容易なことではない.そこで本研究ではまず,濃度階調を256階調に落とし,さらに再帰的に2x2画素の平均を次のレベルの画像とし最終的に1x1画素になるまで階層的に表現する画像の多重解像度表現を適用した.現在は128x128画素,256x256画素の胸部X線画像データを木構造表現を用いて表現し,解析を行っている.ここで木構造は各濃淡値において二値化,ラベリングを行った結果に基づいて構成する.このような処理で得られた木構造を解析することによって胸部X線画像の基本領域として6つの濃淡値が低い(暗い)領域(左肩上領域,右肩上領域,左肺領域,右肺領域,左腋の下領域,右腋の下領域)を抽出する手法について検討した.具体的に左肺領域の抽出を例にとって説明する.左肺領域が木構造を根ノードから辿ったときに,基本領域→(右半分領域,左半分領域),左半分領域→(左肩上領域,左肺領域と左腋の下領域),左肺領域と左腋の下領域→(左肺領域,左腋の下領域)という順序で分かれたとする.ここで最終的に得られる左肺領域は,処理対象画像を見たときに考える左肺領域とあまりに異なっているため,改良を加えた.その改良とは,左半分領域から左肩上領域が分かれた左肺領域と左腋の下領域に着目し,この2領域から,左腋の下領域を木構造を辿ることによって除去するのではなく,その2領域を含む領域を画像に再変換し,処理することで除去する方法である.この方法により,半自動的に改善された左肺領域を抽出することができた.領域の分岐順序や右肺領域についても同様に処理できる.今後は,得られた肺領域を処理対象に病変抽出や木構造に基づく異なる画像の位置合わせについて検討を進めることにしている.
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