研究概要 |
微動探査法は,微動に含まれる表面波の位相速度の分散を利用して地下構造を推定する探査法である.従来の研究では,微動に含まれる表面波のうちのレイリー波が利用されていたが,構造推定の際,モデルを一義的に決定することが困難である問題点があった.一方,表面波のうちラブ波が利用できれば,直接S波速度構造を推定できる可能性がある.さらに両位相速度を用いれば構造探査の拘束条件が増す.そで本研究では微動に含まれるラブ波の位相速度を検出する手法である3成分空間自己相関法を実用化し,実際に3成分微動アレー観測を行うことにより,レイリー波ラブ波の位相速度から地下構造推定し,手法の妥当性を検討した. 地下構造が異なると予想される盛岡市域の5地点において7台の3成分地震計からなるアレーを複数展開し,微動観測を実施した.幅広い波長帯の位相速度を検出するために,アレーの大きさは10mから500mの範囲でその都度変化させて,人工ノイズの少ない深夜に観測を行った.各地点において,レイリー波とラブ波の両位相速度の分散曲線を空間自己相関法により算出し,それらの観測値を満足する地下速度構造をHaskellのMatrix法を用いて推定した.推定された構造は,いずれの地点でも浅部ではボーリング資料から計算されたS波速度と整合した.深部においては,重力探査から求められた基盤深度と矛盾しない結果を得た.よって本手法の有効性が示され,実用化に向けての展望が開けた.
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