研究概要 |
夏季に頻繁に現れる気団性積乱雲と大規模場(前線、台風に伴う場)の中で局地的に形成される強雨ゾーンの発生には必ず空気の収束場の存在が指摘されている。さらに、収束場の強度が持続される場合には積乱雲がある特定の領域に次々と形成され豪雨となるような事例が多い。そこで本研究では、様々なパターンの積乱雲を解析し、豪雨災害につながるような積乱雲の発生機構及び勢力維持機構を探求することを目的とした。本研究では観測手段として既存の観測システム(九州大学農学部気象レーダーと福岡都市域に設置した10数台の雨量計による降雨観測)を中心に,気象庁のアメダスシステム等も利用して、狭い領域(20km×20km)で局地風系を観測した。この観測結果から積乱雲発生以前に先行現象としての空気の収束場が実際に存在したかどうかを調べた。総合的に解析した結果、予想されたように積乱雲の発生の1、2時間前から収束場が形成されていたことが明らかになった。さらに,降水システムが既に存在する場でも収束場が長時間持続し、降雨も持続する傾向も明らかになった。このように収束場が降雨の発生、維持に寄与していることは間違いないが,大気の不安定場の存在も無視できない。高層データとアメダスを用いた解析では夏型の雷雲の発生のプロセスは次のようになると考えられる。まず日射の影響で下層の混合層が徐々に発達し、下層から不安定化する。この不安定化した気層に向かって海風が侵入して収束場を形成する。その結果,収束場の領域で雷雨が発生することがわかった。
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