研究概要 |
高温超伝導体(HTS)は臨界温度が高く,特にBi2223は液体窒素温度でも応用が可能と期待されている。現在のところHTSマグネットの大型化・高磁場化が遅れているが,近い将来には実用段階に到達すると予想される。その時速やかに低温超伝導体からHTSに移行できるように,核融合炉についても応用可能性を検討しておくことが重要である。本研究では,大型ヘリカル装置(LHD)用に開発されたポロイダルコイルの超伝導体をNbTiからHTSに置き換えた場合を想定した冷却方法について検討を行った。LHDポロイダルコイルは,ケーブル・イン・コンジット型の導体を使用し,4.5Kの超臨界圧ヘリウムで強制循環冷却を行っている。この方式はコイル剛性が高く,現状では核融合炉への応用が最有力視されている。 冷却方法としてヘリウム同様77Kの超臨界圧窒素を強制循環させる方法が考えられるが,窒素は臨界圧が3.4MPaと高いことから高圧ガス取り扱いの注意が必要となる。これに対しコイル表面に液体窒素を循環させ表面温度を77Kに保つ間接冷却方式は,これまでのコイルの構造を変更することなく容易に冷却することができる。核融合炉では,核発熱による定常的な発熱がコイル内部に存在する。間接冷却でこれを除熱できるかを,lmW/cm^3の内部発熱を想定し,1次元平板モデルで最大温度上昇を計算した。コイル内周面と外周面を液体窒素温度77Kに保持する。コイルの平均熱伝導率は,実験で測定した導体の断面方向熱伝導率と絶縁物の熱伝導との複合則から求めた。その結果,断面方向熱伝導に対し撚線部の寄与は大きく,低温で熱伝導の良いヘリウムガスを封入するとさらに熱伝導が向上することが分かった。大気圧のヘリウムを封入した計算では,温度上昇を2.9Kまで抑えることが可能であり,液体窒素間接冷却方式の応用可能性が高いことが分かった。
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