研究概要 |
近年、電力需要家による太陽光/風力発電システムの電力系統への導入が,計画されてきている。これらの電源が電力系統に大量に導入された場合,系統の負担率が低下するため,系統を経済的かつ安定に運用するためには,新たな電力貯蔵システムの導入が必要となる。本研究では,太陽光/風力発電システムが中部電力管内の複数地点に導入された場合を想定し,電力貯蔵システムを導入した場合の経済性を電力事業者側の立場から評価する手法を検討した。これまでに,電力貯蔵システム導入後の負荷持続曲線から各電源の発電電力量および必要となる設備容量を計算し,そこから求めた総費用により経済性を評価する手法を検討してきた。しかしながら,この手法では,将来における経済性の評価が困難であるという問題点がある。そこで,システム導入時の各電源の発電電力量および設備容量を線形計画法から計算する手法を検討した。 研究を進めるに当たり,計算手法を確立することに重点を置き,まずは太陽光発電システムが導入された場合についての計算手法を検討した。検討手法では,将来の電力需要を需要の伸び率,太陽光発電の導入量などから想定し,それを季節および曜日から複数のパターンに分割する。これらのパターンに対して供給予備力を計算し,その最大値から年間を通して必要となる全電源の設備容量を決定する。次に,各時刻の電力供給制約,各電源の設備利用率の制約,コスト条件を用いて,線形計画法により各電源の各時刻の発電電力量を決定する。その値から,電源構成および各電源の発電電力量を求め,年間総コストから太陽光発電導入の経済性を検討した。 このような計算手法で太陽光発電システムの導入効果を検討した結果,太陽光発電の経済性には原子力発電の設備容量が大きな影響を与えること,また石炭火力の発電電力量による影響は小さいことが明確になった。
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