研究概要 |
本研究は,光散乱に現れる様々な現象を利用した霧・雲の動態および構造解析法を開発することを目的としている.本年度は,標準微粒子(ポリスチレンラテックス球)の検濁液の濃度および粒径をパラメータとして,光散乱で現れる偏光依存パターン(Polarization anisotropy)の比較を行った.その際には,昨年度からの課題となっている濃度情報と粒径情報の分離のため,偏光依存パターンの詳細な画像解析および透過光の観察を行った.その結果,両者の分離を行うためには,光学的な厚さを減らした状態を実現し,単散乱の情報を併せて測定する必要があることが分かった.多重散乱現象下での単散乱成分のみの情報抽出は今後の課題となる.さらに,散乱体の局所的な濃度に注目した場合には,後方散乱光を単散乱・多重散乱の区別をすることなく観測することにより,散乱光強度と散乱体濃度との関係を導出することが出来る.本研究では,この方法を用いることにより霧濃度計の試作を行った.その結果,開発した装置を用いることにより,任意の場所での霧濃度測定が可能となった.さらに,昨年度作製したレーザ光の消散を利用した霧動態の観測システムに関しては,試作品を用いた実験において光学系のいずれに起因するデータ精度の問題が見つかり,この点に対するシステムの改良を行った.現在は,後方散乱光を用いた霧濃度計システムと消散を用いた霧動態の観測システムとを比較することにより,両者の対応関係を明らかにし,さらに多重散乱成分のみを観測する計測手法を開発している. 今後は,本研究で開発したシステムを用いて,霧動態のリアルタイム観測を行う予定である.
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