研究概要 |
都市ごみの焼却に伴って発生する飛灰および主灰が重金属を含んでいることから,既存の薬剤処理をおこなった処理物と未処理の灰の溶出挙動の把握,および適正な溶出試験法のあり方について検討した。飛灰の処理物としては,薬剤処理を行った試料として,キレート処理物,リン酸処理物,フェライト処理物を選定し,ここに,わが国の公定法である環告13号法,pHの変動した場合の溶出挙動を判断するためのpH依存性試験,溶出ポテンシャルを予測するアベイラビリティ試験を行い,処理前の飛灰との溶出挙動を比較した。環告13号法では,いずれも処理効果が見られたが,pHが変動した場合の溶出挙動には大きな差があり,現在の試験方法では金属類の長期的な溶出挙動は把握できないことが明らかとなった。処理方法と溶出挙動を比較すると,リン酸処理は,酸性側でのPb溶出量の抑制とPbのアベイラビリティ試験を低減するのに強い効果があり,キレート処理物ではCdの溶出抑制とアルカリ性側でのPbの溶出抑制が見られた。また,溶出試験における空気中のCO_2およびO_2の影響を評価するために,開放系と密閉系でのシリアルバッチ試験を行った。CO_2によって溶出液のpHは速やかに低下した。また,溶出液のORPを測定し,pHも併せて考慮したところ,開放系の試験では溶出液が酸化されることも明らかとなった。この時リン酸処理物,フェライト処理物は,pHが速やかに低下し,溶出しやすくなったのに対し,キレート処理物は,処理物自身が酸化されることでpHの低下を抑制していた。しかしながら,キレート処理物が酸化されると重金属類の溶出が促進されることも予想され,最終処分場においては,極度の酸化が起こらないように注意することが必要であることが明らかとなった。
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