研究概要 |
本研究では,ヌクレオシドのコンホメーションを従来の方法とは異なる新しい手法で固定し、その応用を含めて検討することを目的としている。昨年度、申請者は3_デアザプリンヌクレオシドの3位に嵩高い置換基を導入した3-置換-3-デアザプリンヌクレオシド類の合成を行なった。更にコンホメーション解析により3-ヨード、プロモ、クロロ体はいずれも、グリコシル結合回りのコンホメーションがanti配座に固定された基質であることを明らかにした。本年度はその応用としてRNA分解酵素であるRNase T_1との相互作用の検討を行なった。RNaseT_1はRNA分子中のグアニル酸の3',5'-ホスホジエステル結合を極めて特異的に切断し、2',3'環状リン酸体を経由して3'末端に3'-グアニル酸をもつオリゴリボヌクレオチドを生成する酵素である。またその変換の際、基質であるグアニル酸は活性中心においてsyn配座で結合し酵素作用を受けると考えられている。そこでanti配座に固定された3-クロロ-3-デアザグアノシンの2',3'環状リン酸体1を合成し、RNase T_1との相互作用の検討を行なった。また本来の基質であるグアノシンの2',3'環状リン酸体2ならびに3-デアザグアノシンの2',3'環状リン酸体3も併せて合成し速度論的解析を行なった。その結果、化合物3は化合物2と同様にRNase T_1によって加水分解を受けるのに対して、化合物1は全く化合分解を受けないことが明らかとなった。また化合物3のRNase T_1による加水分解反応における化合物1のKi値を求めたところ2.6mMであった。以上の結果は、化合物1がRNase T_1に結合するがsyn配座にコンホメーションが変化しないために加水分解を受けない化合物であることを強く支持しており、デアザプリン塩基部3位にハロゲンを導入することによって、極めて天然気質に近い状態でのコンホメーションの固定が実現できた。
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