研究概要 |
どのようにしてRasがターゲットであるRafを活性化するのかを,主にX線結晶解析の手法によりRasとRafの複合体の構造を決定することにより解明したいと考え,研究を行った. Raf-1のRas-bindingドメイン(RBD)およびCys-richドメイン(CRD)を含む領域については,昨年度中に小さいながらも結晶が得られた.しかし,X線の反射データを得るにはいたらなかったため,良質の結晶を得るために精製法および結晶化条件のさらなる検討を行った.その結果,収量・精製度ともに大幅な改善が見られた.また,GMPPNP結合型ファルネシル化Rasとの共結晶についても引き続き精製・結晶化を行った.今年度より,ファルネシル化を受けたRasについては,大腸菌より調製したRasにRasにin vitroでファルネシル化したものについても精製・結晶化を行っている. また,昨年度,Raf-1のRBDに特異的に結合し,Rasとの相互作用を特異的に阻害するRNAアプタマーをin vitroセレクション法により人工的に単離した.今年度は,フットプリンティングおよびNMR(核磁気共鳴)法により,アプタマーとRaf-1 RBDがどのように結合しているか立体構造上からの解析を行った. さらに,Rasを強制的に二量体化させることで,脂質修飾なしでもRaf-1を活性化できることを見いだした.その際,Rasのeffector領域およびactivator領域の変異によるRaf-1活性化能の低下は強制的に二量体化することでも相補できなかった.したがって,このRasの強制的な二量体化によるRaf-1の活性化には,脂質修飾は不要であるが,その他の領域とRaf-1との相互作用は必要であることがわかった.
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