研究概要 |
蛋白分解は細胞周期進行に重要な意味を持つことがわかってきた。特に、分裂期における時期特異的、基質特異的蛋白分解機序に関してはここ数年Cell、Nature、Scienceと言った一流誌を賑わしている。 Anaphase-promoting complex(APC)はCut2/Pds1や分裂期Cyclinをユビキチン化し、分裂期進行を調整する分子量1500kDa以上のユビキチンリガーゼ複合体である。我々は、Plkの特異的リン酸化によってAPCは活性化し、逆にPKAにより不活化することを報告した(Molecular Cell,1,371-380,1998)。最近、酵母の遺伝学的解析からCdc20、Hct1/Cdh1といったWD-repeat蛋白がAPCの基質特異性を規定していることが示唆された。しかし、これら蛋白群とリン酸化による制御の関係についてははっきりしていない。そこで今年度はこれらWD-repeat蛋白と時期特異的リン酸化が、どの様にAPCの活性化に関与しているかを明らかにすることを目的とした。 まず、ヒトHct1/Cdh1のホモログ(Fzr)を単離し、Cdc20ホモログであるp55CDC/Fzyと共に、Cyclin BやCut2をAPCによる特異的ユビキチン化基質として、リン酸化による制御を含めてAPCの活性制御機序を検討した。In vitroでFzy、FzrはCdc2/Cyclin B(MPF)によりリン酸化される。MPFによりリン酸化したFzyを、精製したS期APCに加えるとCyclin B、Cut2の両者を十分にユビキチン化させる活性を持つが、非リン酸化型は活性はなかった。ところが、Fzrは非リン酸化型が活性化型であり、リン酸化によってAPCと結合できなくなることもわかった。Fzr依存によるAPCの活性化ではCut2はユビキチン化されなかった。また、Mad2はFzyを抑制するが、Fzrには効果がなかった。さらに、活性化型のFzy、FzrをPlkによってリン酸化したAPCに加えた場合、相乗効果を示すが、PKAでリン酸化したAPCに加えると活性がなくなった。以上よりAPCはリン酸化による制御とFzy、FzrといったWD-repeat蛋白群による基質及び時期特異的制御を受けており、その効果は両者間で相乗的であることがわかった。
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